こんにちは。ゆえです。
今回は、木爾チレンさん作「みんな蛍を殺したかった」を紹介します。
4人の高校生の間に起こる、青春ミステリー小説で、すごく話題になりました。
誰かを殺したいほど憎んだことがある人は、共感できると思います。
高校生なら感情移入できて、大人なら学生時代の自分の辛い記憶が蘇るような作品だと思いました。
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「みんな蛍を殺したかった」概要
タイトル:みんな蛍を殺したかった
作者:木爾チレン(きな ちれん)
出版社:二見書房
発行:2022年7月20日
ジャンル:ミステリー
虐待、殺人のシーンが含まれます。苦手な方は注意してください。
あらすじ
義母に酷い扱いをうけ、やけどの跡がある猫井栞と、
死んだ双子の姉の分まで、と母から嫌がらせをうける五十嵐雪、
そして二次元にのめり込み、二次元で恋人を作る大川桜は、
オタクとしてスクールカースト底辺の日々を送っていた。
そんなとき、外見も性格も美しい蛍が、3人の部活に加わる。
自分もオタクだ、という蛍に徐々に救われていく3人。
しかし、同時に絶望へと追い詰められていた。
いつも笑顔で人気者の蛍が、線路に飛び込み自殺してしまった理由とは。
そして、蛍が抱えていたオタクとの繋がりと残酷な過去とは。
木爾チレンさん初のミステリー小説。
感想
少し前に話題になっていたので読んでみました。
表紙やタイトルから見ても分かるとおり、暗く重めの内容です。
帯の“みんな誰かを殺したいほど羨ましい”という文章がピッタリなので、これに共感できる人におすすめです。
醜い欲求や羨ましさが、滲み出ている美しくも醜いストーリーです。
登場人物それぞれが、辛くて息の詰まるような生活をしているので、胸が痛くなるような描写も多かったです。
語り手が、栞・雪・桜そしてラストには蛍、と変わっていくので、それぞれの視点からストーリーが展開されていき、退屈しない構成でした。
ラストに蛍が語り手になったとき、すべての真相が明らかになります。
蛍と栞、2人だけが誓った秘密には、衝撃でした。
考察が必要な作品で、登場人物の絡み合いやストーリーが複雑です。
相関図も用意しているので、読み終わっている方はぜひ考察の参考にしてくださいね。
オタクに嫌悪を抱いていた蛍の本性と、オタク3人が抱える辛い日々が描かれるミステリー。
読みやすいけれど、単行本で読み応えがあり、学生向けの小説です。
一気読み必至でした!
ネタバレ
結末
実は死んだのは蛍ではなく、入れ替わった栞でした。
蛍の本当の母と栞の義母は同一人物で、父親違いの姉妹だったのです。
母に会いたい蛍と、義母が嫌いな栞は、入れ替わって生きていくことを決めます。
順風満帆な人生を歩んできた蛍が、醜い人生を歩んでいくことを決めたその覚悟は、すごく印象的です。
雪と桜は、大人になってそれぞれの人生を歩んでいきます。
雪は姉 六花と幼い頃に話していた、パリに行くことに決めます。
そして桜は、子供を授かりますがうつ病になった夫に娘を殺されてしまいます。
最後まで残酷で、暗い結末でした。
蛍の本性と過去
蛍には、温かい家族がいました。
でもある日から妹が引きこもるようになってしまい、家族は壊れていきます。
ゲーム漬けで母を困らせ、家族から笑顔が消えてしまった原因の妹に腹を立てた蛍。
そして妹のゲームデータをすべて削除することにします。
それを母の仕業だと勘違いした妹によって、蛍を育ててくれた母は刺殺されてしまいます。
それから蛍は“オタクという存在”を憎み始めることになるのでした。
蛍が3人に近づいた理由
前述したとおり、オタクを憎む蛍は3人を見るだけで腹が立って仕方なかったのです。
そして笑顔で3人に近づき、復讐を企てます。
栞の小説を自分の物にし、
雪の姉の代わりとなって、雪がもっと惨めな目に遭うよう仕向け、
桜がネットで作った恋人を横取りしようとしました。
結局、失敗に終わってしまい殺人を犯してしまう蛍でしたが、栞と入れ替わることで罪はバレることがありませんでした。
相関図
主な主人公は、蛍・栞・雪・桜。
複雑な構成になっていると感じたので、相関図を参考にしてくださると嬉しいです。

最後に
とにかく読み応えある高校生向けミステリーでした。
話題になるのに納得です。
ミステリー好きならぜひ読んでみてください。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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